2010年1月16日(土)、東京国際フォーラム ホールB5において 『教育ファーム推進全国大会」が開催された。
わくわく教育ファーム劇場では、歌や人形劇、実況ライブなど、農業体験に参加する人たちの気持ちをぐっと引き込む、ワザの数々を紹介。
ここでは、【わくわく教育ファーム劇場】のようすを報告する。
まずステージに登場したのは、長野県安曇野市の教育ファーム「バジルクラブ」と風来坊(グルーポ・ビエント)の面々。総勢13名からなる大所帯が手にしていたのは、「ペットボトル米マラカス」。何か楽器を持ちたい! というみんなの声で、急きょ当日の楽屋で作ったもの。自分たちで育てた玄米を入れた、お手製のマラカスだ。
一年の活動がスライドで紹介され、コンパニオンプランツとなる“トマト”と“バジル”の混植、キツネに食べられないようにアイガモを電気柵で保護して田に放すところ、9月に藍染め体験をしたこと、イネ刈り後に意を決してアイガモの解体に参加してくれた中学生スタッフなど、子どもたちのいきいきとした姿がとらえられていた。
最後は、体験を振り返るなかで参加者がつくった俳句をもとに作詞した「ありがとうあいがも 2009」を熱唱。アンコールを唄った時には、会場からあたたかい拍手が送られた。
●関連HP(外部リンク):岳っ子ファーム(「ありがとうあいがも 2009」の歌声はこちらからきけます)
![]() 「岳っ子ファーム」の名は、地域の子供会から結成したことから |
![]() 体験をふり返って子どもたちがコメント |
![]() 「ありがとうあいがも 2009」の歌詞はここから見られます(PDF、3.9Mb) |
JA秋田ふるさと青年部の部員が、神奈川県相模原市立大沼小学校に出向き、イネの栽培を指導するこの取組み。ステージ上に青年部部員と、小学校の先生が登場したところで、すかさず「起立! 礼!」と号令が。会場を教室に見立て、出前授業の形で交流のようすを再現してくれた。
交流1年目。車で10時間かけて秋田からやってきたJA秋田ふるさと青年部は、小学校でずっと使っていなかった花壇を田んぼに仕立て、半日がかりで苗を植えたという。代掻きも子供の足で行い、半年後にぶじ収穫! となるはずが、鳥に食べられてしまい、とれた米はわずかだったとか。
2年目は、青年部部員を“師匠”役に、“弟子”役の小学生を数名ずつつける「弟子入り制度」を導入。目が行き届くことで、疑問にもすぐ対応できたりといいことずくめだったそう。3年目はさらに、師匠が自己紹介をする姿をおさめたビデオレターを出前授業の前に届け、子どもたちに見てもらうことで、会う前から親近感がわく工夫も。
そんな「弟子入り制度」の成果を、青年部部員と先生による寸劇で解説。苗の植え方に自信のない子供が、師匠に植え方を教えてもらう場面では、子ども役に扮した先生が「わーい! 師匠のおかげで僕も上手に田植えできたぞ!」と無邪気に喜ぶ姿に、会場も大爆笑。ほかにも、鎌を使って稲刈りの方法を教えてもらう場面もあり、ユーモアあふれる演技に生徒たち(会場の観客)は大いにわいた。
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青年部部員と先生による寸劇に、会場は大いにわいた |
東京都練馬区で300年以上続く農家の白石好孝さんは、自身の畑を利用した体験農園「大泉 風のがっこう」を運営している。「体験農園はいわば、野菜づくりのカルチャースクールですね」と言う白石さんによれば、最近、農に近づいてくる人たちの幅が広がったのを感じるそう。
そして農家が体験者を受け入れる時何に注意するべきか、体験者を飽きさせない工夫など、経験をもとにした具体的な実践方法が紹介された。
学校の授業を使った農業体験の場合、限られた時間になってしまうので、事前に先生と相談して効率よいタイムスケジュールを組むことが大切だという。また、子どもを地面に直接座らせると土いじりを始めてしまうので、少し高い台を用意する、穴あきマルチを畑に張り「その穴2つ分が、自分の分だよ」と教えるとわかりやすいなど、貴重なノウハウ満載のステージだった。
●関連HP(外部リンク):練馬 白石農園(大泉 風のがっこう)
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短い時間で効率よく体験をしてもらえる工夫を、と白石さん |
「日本一の柿のまち」をキャッチフレーズに掲げる五條市。そんな柿産地に位置する西吉野中学校では、総合的な学習の時間に、柿づくりや郷土料理をつくる「カッキータイム」を設けている。
活動のようすをまず、3年生の平井美沙さんが、作文で読み上げてくれた。大阪のスーパーに販売体験をしに行った時は、最初恥ずかしくて声が出なかったけれど、お客さんに試食してもらい「おいしいね」と言われたのがうれしかったこと、柿の葉ずしなどの郷土料理や、柿ピザなどのアイデア料理に挑戦した経過などが紹介された。
そして、NHK杯全国中学校放送コンテスト奈良大会で最優秀賞を受賞したという「カッキータイムショー」を、ステージ上で再現。マスコットキャラクターの“カッキー”と“カキミー”を案内役に、「柿は、一日2万個も摘蕾(てきらい:いらない蕾を取ること)する作業はたいへんだけど、柿を愛してます!」と言う平先生などとの掛け合いもバッチリ。
進路決定をひかえた大事な時期に3年間のカッキータイムの成果を堂々と発表する、笑顔のステージだった。
●関連HP(外部リンク):カッキータイム 西吉野中学校
![]() カッキー、カキミーに扮する、西吉野中学校3年生の平井さんと小林さん |
![]() 家庭科の先生役(西さん)も登場した「カッキータイムショー」 |
![]() 平先生との掛け合いもバッチリ |
おいしい野菜をもっと食べてもらいたいという思いから、ホテルの自家菜園でさまざまな野菜を育て、朝のバイキングなどで提供しているという山際さん。雪が1.5mも積もっていたという福島県から、雪室に保存しておいた大根を携え、登場。
修学旅行やスキー教室で訪れる子どもが多いので、野菜をたくさん食べてもらえる工夫をと、素材の味を引き出したオリジナル料理を開発しているそうだ。
そのメニューの一部を紹介すると……キュウリのアイス、大豆ふりかけ、ナスとインゲンの米粉揚げ、車麩フレンチトースト、ほどいものコロッケ、芋がらカレーとタルトなど。なかでもキュウリの甘露煮は、地元のおばあちゃんから「酒、醤油、みりんを入れ、水を入れずに作るんだよ」と教わったという。
そしてステージ上では、“大根ジュース”を実演。ほどよい大きさに切った大根に水を加え、ミキサーにかけて茶こしでこしただけの簡単なものだが、試飲をした司会者からは「え、このジュース、甘い! ほんとに大根だけですか?」と驚きの声があがった。
●関連HP(外部リンク):ヴィライナワシロ 農場長のブログ
![]() ひと口飲んで「この大根ジュース、甘い!」と驚きの声 |
![]() 育てた野菜をおいしくいただくためのオリジナル料理の数々 |
文責:事務局・阿久津若菜、写真:児玉記幸