天然の冷蔵庫に「生ける」種採り地大根
2009 年 10 月 29 日安家地区教育ファーム推進協議会(岩手県・岩泉町)
安家小学校の児童たちが7月末に種を採り、8月初めに播種を行った在来野菜、安家地大根が収穫期を迎えた。みんなで掘り出した地大根は、先がとがっていたり、丸かったり、先が二つや三つに割れていたり千差万別。
「去年はすごく小さい大根ばっかり。今年は自分で採った種がこんなに豊作で、すごくうれしい」と5年生の女子。
「さあ来年の種採りに使う大根を選びましょう」と、指導する小野寺キヌエさん。
「太すぎるものは、すが入ってしまうのでよくありません。直径が12センチくらいで、先がとがっている、赤みの強いのがいい大根です」
見て、比べて、悩んで、これだ!と1人1本選んで集まった12本から、さらにみんなで来年に残す6本を選りすぐった。保存は畑のすぐ隣に。冬の間低温と雪に閉ざされる地中に、大根やニンジンなどの野菜を新鮮なまま保存できるのだ。地元では「生けておく」と呼び習わす、春まで食べ継ぐ生活の知恵、気候風土が生み出したまさに天然の冷蔵庫。指導農家の道地文太郎さんは、掘った穴に青々とした杉の葉っぱを敷き詰めた。
「ちくちくするのを嫌ってネズミが近づかねえんだ」
ていねいに並べた大根に声をかける子どもたち。
「おやすみなさーい」
「生きててねー」
「がんばれよーダイコン~」
隙間ができるように木の枝をかぶせ、ワラを数束、その上から土をかけて戻した。
締めくくりは、安家地大根の料理。保存会の嘉村明美さんと食生活改善員の方が、掘りたての地大根を使って天ぷらや大根おろしを作ってくれる。さっそく校庭のベンチでいただきます!
「パリパリしておいしい!」
「おろしが辛~い!ウチの地大根よりも辛い」
「甘酢をかけた方がおいしいよ」
「来年また種を採るのが楽しみです。うちでも料理をつくってみたい」と5年生の男子。集落で、それぞれの家で、何百年も繰り返してきた作物のサイクルを、子供たちも初めて自ら結んだ一年になった。
文責:東北ブロック事務局 渡辺征治