唐箕は共同作業を学ぶ格好の教材
2009 年 11 月 19 日なぐも原・結いの里(新潟県・十日町市)
東京都内や埼玉県の小学校19校で、出前授業の「お米の学校」を開いているなぐも原・結いの里。この日は、西東京市立保谷小学校の5年生70人が、指導農家、臼井隆さんのもとで、10月に子どもたちが収穫した学校田の稲を使って、脱穀・選別・精米体験に挑む。
まずは脱穀。順番に並んで足踏み脱穀機にイネを当ててペダルを踏み、そこから漏れた細かいイネは千歯扱き担当の子が脱穀する。イネを目の前にかざして、「まだモミがついてる」とつぶやきながら歯の間に通しなおし、きれいにモミが取れたのを確認して、ニコリ。
次は、選別。子どもたちは、初めて見る唐箕(とうみ)の形と大きさに興味津々。臼井さんが、横に付いているハンドルで風車を回して風を送りはじめると、「ブーーン」、大きな音が唸りを上げる。
「この機械は今でも使ってるんですか?」と子どもたちにきかれて臼井さんは、「この唐箕が元になって電動のコンバインが開発されたんだよ」
知恵や工夫を重ねながら道具の開発をしてきた人たちに、子どもたちは「へぇ~~」
「風が強すぎると、ゴミだけじゃなく玄米まで飛んじゃいます。だから出てくる玄米を見る人が、強いとか弱いとか言ってあげて、ちょうどいい風の加減を見つけてね」
臼井さんの指示を思いだしながら唐箕の周りを囲んで、漏斗(ろうと)の上からモミを落とす子、風車を回して風を送る子、風で飛ばされたゴミをビニール袋で受けとる子、下に落ちてくる玄米を受け取る子、玄米の落ち具合を見まもる子…
「位置についたかー?」
「ダメ、まだビニール袋がいない!」
「いいかー」
回転開始! 風がブーーーン!
「おーい、風強すぎー! これゴミじゃない、どう見ても米、米まで飛ばされちゃってるー!」
唐箕から離れたところでは、モミがついたままのイネをまだ千歯扱きにかける子、ワラくずを集める子、それをビニール袋に入れていく子、床に散らばっている玄米を集める子…
一人ではなく、みんなで手分けしてやることを前提につくられている昔の道具。スイッチ一つで動く機械に囲まれて生活している子どもたちにとって、共同作業で力を合わせることを学ぶ格好の教材だ。
文責:関東ブロック事務局 中川哲雄