子どもたちを丸ごと受け入れる「むらの作法」
2008 年 7 月 12 日かごしま食農育協議会(鹿児島県・出水市)
山の子たちは、鹿児島県姶良(あいら)郡蒲生(かもう)町 漆(うるし)小学校、全児童11名。
海の子たちは、鹿児島県出水市 蕨島(わらびしま)小学校、全児童8名。
ふたつの小さな小学校に通う子どもたちが、半年間、海と山のお互いの地区を行き来しながら、海辺(蕨島)ではアオサ海苔を育て、山(漆)ではソバを育て、交流しあうというのが「うるし作人塾」(かごしま食農育協議会)の取組みだ。
町に住む子が生産地へという一方通行ではなく、共に生産地に暮らす同士が交流しあうケースは珍しい。しかも漁村と農村という異文化の空間で経験を積むというのもユニークだ。
山チームが海チームへ出向いて、初顔合わせの7月12日(日)。
海チームのホームベース、蕨島(わらびじま)小学校の校庭では、保護者のほかに、じいちゃん、ばあちゃん、近所のおばちゃん、地域総出で交流会の食事の準備。まるで祭りのようなにぎわいだ。大漁旗が勢いよくはためく校舎の横に用意された座席はなんと約100人分。
「えっ? 小学生たちだけじゃないんですか?」
「人がどんどん減って、子どもいないから年寄りばっかり。ほんと、さびしくなった。小学生は8人しかおらん。今日みたいに村あげて、よその村の人を迎えるのは久しぶり。みんな、ものすごっ楽しみにしとった」と語ってくれた島のおばあちゃんの言葉に、「座席100人分」の謎がとけた。この取組みには、子どものためだけでなく、大人たち、ひいては集落全体を元気づかせたいという思いがこもっているのだ。
開講式」という名の宴は2時間以上続き、全員の自己紹介とスイカ割りで大人も子どもも一気に打ち解け、次の山での再会を約束しあった。
(文責:事務局)