何が違うのだろう?作り手が変わると、味が変わる。
2009 年 6 月 19 日NPO法人オリザ・ネット(宮城県・仙台市)
鍋で温めた豆乳ににがりを加えること10秒あまり。かき回していたヘラを抜くと、もうそれは液体でなかった。
「ウソッ」「すごいすごい」「プルプルしはじめてる~!」
息を飲んで見つめるのは、宮城学院女子大学の学生10名+穀物のポストハーベストシステムを研究する(株)山本製作所社員5名。
豆腐づくり体験の師匠、温泉宿の食事処で親方を務める阿部幹也さんのお手本[にがり打ち]は魔法のようだ。
まず、豆乳に差した温度計をにらみつつ68℃まで温める。親方が見まもるなか、ヘラでかきまぜながら、にがりをチョロ……ひと呼吸置いて、全投! ヘラを止める。「うわ~!!」再び歓声。さあ試食だ。
「実は豆腐苦手なんですけど、これはおいしい」(女子社員)
「でも先生の鍋は固まり方が均一でなめらか。私たちのはゆるい感じ。どうして?」(女子学生)
「かき回し方、にがりの打ち方、ヘラを打つタイミング、微妙な加減で変わります」
豆腐をつくって13年の答えに、感心するばかりであった。
女子学生たちは食品栄養学科で管理栄養士の資格取得を目指している。「いずれカフェやお店をもちたい」という夢をはじめ、食に関わっていこうと考える学生は多い。食べながらの雑談で、農業にも話は及ぶ。
「わたしは農家の嫁になってもいいと思うけど」
「ウチ米つくってるけど、絶対農家には嫁に行くなって言われるよ。大変だって」
そんな彼女たちを見ながら、オリザ・ネットの理事長で宮城学院大学の正木恭介教授は「彼女たち調理体験は大好きだけど、その前の、食材を生み出す農業体験のモチベーションは比較的弱い。実経験も少ないので、そこをどう理解してもらうかが大きなテーマです」
翌日は、宮城学院大学付属幼稚園児たちが田んぼの観察と大豆の種まきにやってくるので、この学生たちには子どもたちの先生になってもらう予定だ。「だからみなさん、今日はしっかり覚えてくださいね」
未来の栄養士たちの教育ファームは続く。
文責:東北ブロック事務局 渡辺征治